糖質制限ダイエットとは結局何なのか

5月末に勢いでヒルクライムレースに出ることになったので、「軽さは正義」とばかり減量に取り組むことにした。
「痩せてますよねえ」「結構食べるのに太らないっすよねー、うらやましい」とよく言われるのだが、それは中身をよく知らない人からみた話。
特に今回の米国赴任後、比較的暴飲暴食に近い生活を送ってきたこともあり、ちょっと前まで体重は身長-100だったし、体脂肪率も22%。とても「ボク運動やってます」なんて言えるカラダではないのだ。

大原則として、摂取カロリー<消費カロリーにすりゃいいんだろうけど、それに加えて糖質制限をすることにした。糖質が枯渇することで脂肪をエネルギーにしやすくなる、とか、ケトン体ダイエットは超痩せる、とかまあそんな話をいろいろ聞くので。

糖質制限ダイエットのしくみ
これまでいろいろ調べて、まあ、こういうことなんだろうなというのは以下の通り。ダイエットは金儲けのネタになるだけあって、いい加減な記事や論理的でない記事が多いのだが、できるだけ学術的・客観的な記事をベースに調べてみた。

1. 栄養素ごとのエネルギー発生(ATP生成)方法
(1) 糖質(1gあたり4kcal)
・摂取された糖は、消化によってグルコースとなり、グルコースを原料として以下2通りでATPが生成される。
解糖系→クエン酸回路→電子伝達系でATP生成(有酸素)
~有酸素環境におけるATP生成で、解糖系でピルビン酸からさらにアセチルCoAが生成され、クエン酸回路、電子伝達系を経てATP38単位を生成。
解糖系(無酸素)
~無酸素環境では、解糖系でピルビン酸が生成される際にATP2単位が生成される。①と比較してすぐにエネルギー発生できる一方、併せて乳酸も発生するので長時間続かない。いわゆる無酸素運動における瞬発力的エネルギーの発生がこれ。

・なお、糖質を摂取すると血糖値が上がるため、血糖値を下げるために膵臓からインスリンが分泌され、筋肉組織がグルコースを血液中から取り込んで解糖系に投入したりまたはグリコーゲンとして貯蔵(ただし多くない)、もしくは脂肪組織がグルコースを血液中から取り込んで中性脂肪に変換するのを促す。端的に言えば、エネルギーとして消費または一部貯蔵されるもの以外は脂肪になる。一方、肝臓はインスリンの助けなしにグルコースを取り込み、グリコーゲンに転換して貯蔵したり、脂肪に転換する。

(2) 脂肪(1gあたり9kcal)
・摂取された脂肪は、脂肪組織である脂肪細胞に蓄積される。空腹時や運動時に活発化する酵素リパーゼの働きで脂肪酸とグリセロールに分解され、脂肪酸は以下の方法でATPを生成する。
β酸化→クエン酸回路→電子伝達系(有酸素)
~β酸化でアセチルCoAが生成され、クエン酸回路、電子伝達系を経てATP78~197単位(脂肪酸の種類で変わる)を生成。
脂肪酸は脳関門を通過できないので、脳細胞ではこの反応は起こらない。
ケトン体
~糖質が枯渇すると、主に肝臓でアセチルCoAが余剰となるため*、アセチルCoAからケトン体が生成される。ケトン体は血液に乗って肝臓から各細胞に運ばれた後、再びアセチルCoAとなってクエン酸回路に投入され、ATPを生成する。
~ケトン体は脳関門を通過できるので、糖質枯渇時にはケトン体が脳細胞にとっての重要なエネルギー源
 *糖質が枯渇している状態では、主に肝臓でクエン酸回路の中間物の1つであるオキサロ酢酸による糖新生(血糖値を維持するために他の物質から糖質を生成する動き)が促進される。そうすると、クエン酸回路中のオキサロ酢酸が不足してクエン酸回路の効率が低下し、投入物であるアセチルCoAが余剰となる

(3) タンパク質(1gあたり4kcal)
・摂取されたタンパク質はアミノ酸に分解され、アミノ基転移反応による窒素代謝を受けて対応するα-ケト酸に変換される。α-ケト酸は対応するアミノ酸の種類により以下の2通りで炭素骨格代謝を受け、グルコースまたは脂肪酸・ケトン体となり、エネルギー源となる。
糖原性アミノ酸~オキサロ酢酸に変換され、糖新生プロセスに乗りグルコースとなる
ケト原性アミノ酸~アセチルCo-Aに変換され、脂肪酸またはケトン体となる

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代謝のしくみ(たぶん)


2. 糖質制限をする理由

糖質制限ダイエットを勧めるサイトがよく言っているのは以下の3点。

①糖質を枯渇させることにより、脂肪を原料としたケトン体の生成を促し、それをエネルギー源として活用することで、脂肪燃焼しやすい体にする。
②糖質を制限することにより血糖値の急上昇を防ぐ、つまりはインスリンの分泌を抑制し、糖が脂肪に転換されるのを防ぐ。
③糖質が枯渇することで糖新生が起こる。糖新生はエネルギーを消費する反応なので、ダイエットに効果がある。
→私的には、①②は意味が分からず、③のみが理解できる。

基本的に、摂取カロリー<消費カロリーであれば、不足分はどうしたって体の蓄えから持ってこなくてはならない点では糖質制限をしようがしまいが同じ。では、糖質制限をする場合としない場合とで、何が本質的に違うのか。

は、脂肪酸から生成されるアセチルCoAをクエン酸回路で回してATPを生成するのは通常起きていること。糖質制限をしてケトン体を生成させようが、普通に脂肪酸としてエネルギーに利用しようが、脂肪を消費していることに変わりがない。

は、摂取カロリーが同じなのであれば、糖質制限している場合には糖質の代わりにその分脂肪を摂取しているわけである。したがって、糖質を摂取してインスリンの働きで脂肪に転換されるか、もとから脂肪を多く摂取しているかの違いだけであり、結局最終的にその脂肪を消費する必要があるという点では同じでないか。

は分かる。糖質が枯渇したときだけに起こる反応は糖新生である。糖新生はエネルギーを費消する反応である。つまり、糖新生が起これば体の蓄えがその分余計に減ることになる。したがって、糖質制限を行い糖新生を起こした方がダイエット効果は大きくなりそうである。

3. 糖新生がポイントだとすると
そうすると、ここで問題となるのは、何が原料となって糖新生が行われるかということである。一般に糖新生は、ピルビン酸、乳酸、アミノ酸、プロピオン酸、グリセロールが元となって起こる。ここで重要なのは、アミノ酸からの糖新生はタンパク質が原料であるということである。したがって、十分にタンパク質を摂取していない状態でアミノ酸からの糖新生が起こると、すでに体内に存在するタンパク質、即ち筋肉が削られて糖新生が起こるということになる。その日の食事でタンパク質を十分に摂れない場合には、タンパク質が欠如した糖質制限を維持するよりも、糖質制限を解除して糖新生を起こさない方がまだマシと言えるのではないか。

4. まとめ
体重を減らすには、まずは摂取カロリー<消費カロリーとすることが大前提。
そのうえで糖質制限を行えば、体内で糖新生が起こり、その際に余計にエネルギーを消費するため、ダイエット効果が大きくなる。
ただし、タンパク質を十分に摂取しないと、筋肉が落ちる恐れがある。

長くなったので実践編は次回以降。