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ATPの生成とLT(Lactate Threshold)

盆栽のようにロードバイクを飾っているだけの人間がトレーニングについて語るのはおこがましいことこの上ないが、一応2年前くらいまでは、それなりに体系だったトレーニングをしていた(こともある)ので、少しくらいは書いてもよかろうと思う。

ロードバイクで速く走るために必要なのは心肺能力と筋持久力である。ときどき、「ロードバイクで最高●●km出ますた!」とか言っている人がいるようだが、ロードバイクのトレーニング的には最高速度など全くどうでもいい指標である。長時間持続できる運動としてどれだけのパフォーマンスが出せるか、出せるようになるかがロードバイクのトレーニングの主眼である。

今日は、まずその前段として、人体がエネルギーを発生する仕組みを理解しておきたい。エネルギーを発生させるためには、体内でATP(Adenosine triphosphate)を生成する必要がある(以下、多少単純化して書いている)。

ATPは、有酸素環境での生成と、無酸素環境での生成の2通りがある。
運動強度が低いときは、主に脂肪を原料とし酸素の供給を受けてATPが生成される。原料の脂肪は体内に山ほどあるので、酸素の供給が間に合う限りにおいては、この方法でATPが生成される(有酸素)。
運動強度が上がると、酸素の供給が間に合わなくなるので、ブドウ糖を原料として酸素なしでATPが生成されるようになる(無酸素)。この方法でのATP生成は、ブドウ糖が分解される際に乳酸が発生するため、強度を上げていき体内での乳酸消費を超える速度で乳酸が発生するようになると、急激に血中乳酸濃度が上がり、続かなくなる。

この「急激に血中乳酸濃度が上がる」時点、これより運動強度が低ければ、血中乳酸濃度の上昇が抑えられているため、長時間持続可能な運動となる。したがって、トレーニングにあたっては、「急激に血中乳酸濃度が上がる」時点の運動強度におけるパフォーマンスをいかに高めるか、これを追求することになる。この「急激に血中乳酸濃度が上がる」時点(LT=Lactate Threshold)における心拍数をLTHR(Lactate Threshold Heart Rate)と呼び、トレーニングではLTHRを基準としてどの程度の強度の運動を行うか検討することが極めて重要である。日本ではあまり論じられていないようだが、海外のトレーニング本を見ると、ほぼ全ての本でLTHRを基準としたトレーニング法が述べられている。

なお、LTHRにおいては血中乳酸濃度が急激に上がるわけだが、そのときに無酸素によるATP生成のみが行われているわけではない。LTHRにおいても有酸素系のATP生成は行われているが、生成が間に合わないので無酸素系の生成が増えていき、結果、血中乳酸濃度が上がるということである。したがってLTHRの運動強度ではもちろん呼吸を一生懸命している状態であり、100m走のようないわゆる無酸素運動の状態ではない。

LTHRの測定方法は次回以降に。