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パワーメーター② - それでもPowertap

今回、Noah Fast用のパワーメーターとして何を導入しようか、少しだけ考えたが結局またしてもPowertapにした。ここで言うPowertapとは、オーソドックスなハブ式のやつのことである。
これだけ各社がパワーメーターを販売しているなかで、なぜまたPowertapなのか。


1. まともなパワーメーターである
当たり前だが、パワーメーターというのは動力を計測するものである。なんで心拍数や速度計じゃダメかというのは、こっちの記事にも書いたが、自分がどれだけ苦しい思いをしているかを示す「心拍数」とか、そのときそのときの外部環境(風、勾配、路面等)に大きな影響を受ける「速度」では、パフォーマンスを正しく計測できないから。正しく、というのは、時系列比較や他人との横串比較ができることを指している。
なので、当たり前だが、パワーメーターは動力を正しく計測できるものでなくては意味がない。
そすと、同じPowertapブランドであるPowercalのように心拍数等からロジックで便宜的に動力もどきを算出するような機器は、まったく意味をなさない。昔あったiBikeというのも、同じ理由で論外。また、クランク式やペダル式パワーメーターで片側計測のものがあるが、これも、動力を正しく測定しているとは言えない。半分は「右脚と左脚の出力が同じだと仮定したうえでの」推測値であり、計測値ではないのだから。

余談だが、これに関して、ネット上で、片側計測方式を推奨する次のような解説を見つけたので紹介したい。

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コーチの間では以下の根拠から、片側の計測値を2倍する方式のほうが実は精度は上がるという意見も多くあるからです。
(1)データドロップ
 計測したパワーの信号を左右のペダルがそれぞれにヘッドユニットに送信する場合、故障などにより片方の信号が送られない時に、表示されるパワーが実際の半分になってしまいます。通信が長時間途絶えた場合は異変に気が付いても、短時間で正常復帰するような通信不備が複数回起こるようなケースでは気がつきにくく、実際より低く表示された平均出力を信じてしまう恐れがあります。
 片方の計測値を2倍する方式であれば、もし通信が途絶えると表示は0Wになるため不具合は明らかですし、パワーセンサーが片側のみのため、故障発生率は両側にセンサーがある場合と比べて単純に1/2となります。
(2)左右の出力差は実は少ない
 片側の計測値を2倍する方式について、左右の出力差が大きい人の場合、トータル出力が実際とは大きく異なってしまうという欠点がよく指摘されます。しかし、一般的にパワーゾーンが上がれば上がるほど左右の出力差は小さくなり、テンポゾーン以上では左右の出力は自ずと揃うと言われています。結果、その強度で走行している限り、左右それぞれ独立して計測した出力の和と左側の出力を2倍した数値はほとんど同じになります。

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片側計測タイプを売りたい気持ちはわかるが、突っ込みどころ満載ですな。(1)は、出力が半分で表示されればふつう気づくでしょ。それから、そもそも通信が途絶えるなんてことは滅多にないのでご安心を。(2)は、左右の出力差が実は小さいと信じるかどうかは勝手だが、ウェブ上ではユーザーが実際に数字を示して左右の出力差が結構あることを紹介している記事がいくつかある。そっちの方がよっぽど信頼できる。
いずれにしても、(1)も(2)も、最初に自分で言っている「片側の計測値を2倍する方式のほうが実は精度は上がる」根拠には全くなっておらず、「片側でもまいっか」の説明にしかなっていないところが面白い。。極端な話、「まいっか」と思えるくらいなら、最初から「心拍計でいっか」と思った方が安上がりであり、「心拍計でいっか」と思えない人がパワーメーターを買うのであれば「片側でいっか」などとは思えないハズなのだが。。

片側計測以外にも、計測精度に難のあるパワーメーターはある。バルブに取り付けするAroflyってやつがあるらしいが、精度はどうやら±10%らしい。これじゃ使い物にならないよね。300Wが270Wと表示されても知らん顔な人はパワーメーターを必要としない人。ある程度煮詰まってくると、FTPを5W上げるのも大変なのに。。ま、Aroflyはタイヤ内部の空気圧の変動から計測しているらしいので、動力を直接計測しているわけじゃない。パワーメーターとは呼べず、iBikeなみのゴミに分類すべきかもしれぬ。

そうすると、「まともな」パワーメーターというのは、
①クランク式両側計測
②ペダル式両側計測
③ハブ式
の3つに限られる。以降、「まともな」パワーメーターのみを対象として話をする。

2. 取付に関する制約
取り付ける際にどういった制約があるかについて。
クランク式では、当たり前だがシマノシマノのクランクと一体でありシマノのクランクしか選べない。パイオニアは取り付けクランクが限られているが、ここからじゃ選べないよ、という感じではない。ただし、自分じゃ取り付けできず、メーカーに取り付けをやってもらう必要がある。
Powertap C1(Powertapが出しているクランク式のもの)は5本アーム、PCD110に適合するとなっているが、アームがクランクに隠れるタイプのものはダメで、結局現行のミドルクラス以上のクランクにはほとんどつかない。
ペダル式は、GarminにせよPowertap P3にせよ、Lookペダルとしか互換性がない(vectorの一世代前モデルにはシマノ対応もあったようだが)。たまたま私はLook のKEOを使っているが、そうでなければ改宗する必要がある。これって嫌な人は嫌なんだろうな。。
ハブ式は、当たり前だがハブだけ買ってきてもどうしようもなく、ホイールを組む段階で組み込まなくてはならない。そすと、所望のホイールに組み込めるかどうかには制約がある。アルミクリンチャーなら手組みできる人は手組みで自分の満足のいくPowertapホイールを組めるだろうが、カーボンディープリムのホイールだと、手組ってわけにいかないだろうから、Powertap自体から完組ホイールを買うか、Powertapを仕込んでくれる仕様のホイールを組んでくれる業者を探す必要がある。

3. 運用上の制約
ここで言うのは、パワーメーターを取り付けたことによってロードバイクの運用にどのような制約が出るかという観点での考察。
即ち、ロードバイクを複数台持っている人がパワーメーターを共用したり、1台のロードであってもコンポやパーツ等を変える場合にパワーメーターが使えたりするかどうか。
 クランク式の場合、今日はCayo、明日はCAADみたいな載せ換えは現実的に無理。一方、1台のロードでだけ使うのなら、場合に応じてクランクを取り換えると言うケースは通常はないので、パワーメーターが1台あれば困ることはないだろう。
 ペダル式の場合、別のロードに載せ換えるというのは、ペダルを付け替えればいいので、面倒だけどできないことはない。一方、1台のロードの運用において、ペダルを状況に応じて使い分けるということはまずないので、こちらもパワーメーターが1台あれば困ることはないだろう。ペダルというのは買い替えることもあまりないパーツだと思う。もっとも、一番汚れたりキズがついたりするパーツであることは確かだが。
 ハブ式の場合、別のロードへの載せ換えはホイールごと共用すればいいので簡単だが、1台のロードで場合に応じてホイールを替えるというのは比較的頻繁にあるのでその場合はホイールの数だけパワーメーターが必要になる。ある程度ロードやってる人の自転車部屋に行けば、持ってるロード以上の数のホイールが転がってるのが普通だろう。

4. 価格
こうしてみると、ハブ式パワータップにはいろいろと運用上の制約があるが、にもかかわらずハブ式パワータップを採用する最大の理由は、価格。G3のメーカーサイトでの正規価格は399.99ドル。4万円強ですぜ、旦那(もしかして国内代理店で6万3千何某かを払って買おうと思ってる人がいたら、カネの無駄だからやめましょう。日本経済への貢献は結構ですが、カネは真に付加価値のあるものに払いましょう)。「まともな」パワーメーターで4万円程度というものは、Powertap G3のほかには同じPowertapブランドのクランク計測型パワーメーターであるC1(349.99ドル)くらいしかない。これというのも、ハブ式というのは昔からあって技術が枯れているので、開発投資をほとんど回収しているからだろう。我々ユーザーからすれば、動力が正確に計測されさえすればいいので、何も新しい技術の開発投資の回収に率先して貢献する必要などない。
3で、ハブ式はホイールの数だけパワーメーターが必要と言ったが、G3を3つ買ってもパイオニアと同程度のコストである。普通は2つもあれば十分だと思う。

5. 機能
大事なこと忘れてた。
クランク式やペダル式の場合、ペダリング効率を見ることができる。この機能がどうしても欲しいと言う人は、ハブ式はそもそも対象にならない。
これ、あったらいいんだろうな、と思うし、1回も見たことがないのと1回でも見たことがあるのでは随分と違うのは確かだろう。
ただ、ペダリング効率を表示させるとなると、それ用のサイコンが必要(パイオニア、ガーミン)だったり、スマホに表示させなくてはならなかったり(p1)するし、そのうち使わなくなるんじゃないかと思ったり、そもそも乗ってる最中には見ないだろと思ったり、結局パワーが計測できれば別にいいというのが私の結論。これは人によって違うと思う。

6. 重量
一応、サイクリストなので重量についても言っておく。従来、ハブ式パワータップの最大の欠点は、ちょっと落ち込んじゃうほど重いということであった。しかし、今のG3は325g。リアハブなんてもともとふつうに300gくらいするのだから、ほとんど重量増にはなっていない(アルテグラのフリーハブFH6800と比べるとむしろ軽い)。
下表を見ると、G3に限らず、もはやパワーメーターをつけたからといって重量はほとんど気にしなくてよい感じ(P1はやや重いか)。

7. 電池寿命
これ意外と重要。P1の60時間というのは圧倒的に短いし単4電池というのもいけてない。200~300時間持てばそうしょっちゅう替えるという感じではない。電池はやっぱりCR2032が入手性・運搬性の観点からベストだと思う。
ベンチマークとして記載したSRMは1900時間という圧倒的寿命だが、電池交換の際には本国にクランクごと送らなくてはならない。数年に1度のことだとはいえ、必ずそういう時が来るわけで、はっきり言ってまったく許容できない。。

結論としては、ハブ式であるPowertap G3はホイールが制約されるというデメリットがあるものの、圧倒的な価格の安さと致命的な欠陥(※)のなさから、引き続き最も無難な選択と言える。
(※)電池寿命が短い、取付が制約される、重い 等

[重量・価格など]

Shimano Pioneer Garmin Powertap P1 Powertap C1 Powertap G3 SRM origin
方式 クランク クランク ペダル ペダル クランク ハブ クランク
測定誤差 2% 2% 1% 1.5% 1.5% 1.5% 1%
重量 679 64 316 432 288 325 602
重量増 62 64 76 192 158 -5 -
価格・万円($) 14.4 13.0 12.8(1,000) 13.9(800) 9.9(350) 6.4(400) 28.4(2,650)
価格増・万円($) 8.8 13.0 11.2(840) 12.3(640) 9.9(350) 5.2(280) 22.8(2,100)
比較対象 DuraAce Look KEO Blade Look KEO Blade DuraAce シマノFH6800
電池寿命 300 180 120 60 200 200 1900
電池タイプ 充電 CR2032 CR2032 単4 CR2032 CR2032 独自
寸評 高い、選択肢限定 高過ぎ 高い、Garmin嫌い 重い、電池寿命短 安いが取付極めて限定 ホイール制約されるが安い 殿様

(注)「重量増」「価格増」は、「比較対象」に記載のクランク、ペダル、ハブ(いずれもパワーメーターなし)を取り付けた場合との比較。
(注)価格は、日本での販売価格(万円)と米国での販売価格($)
(※)余談であるが、本邦販売価格と米国販売価格の差をみると、キルシュベルクというPowertapの日本代理店のぼったくりっぷりは利益率の高さは目を見張るものがあるな。